ブロックチェーンと医療

ブロックチェーンと医療

医療業界では多くの問題を抱えています。

その解決策として近年注目されているのがブロックチェーンです。

医療業界におけるブロックチェーンの活用は、日本でも導入事例が増えてきています。

今回は、ブロックチェーンと医療の関係性について、期待される課題の解決と事例も紹介しながら解説していきたいと思います。

医療分野における課題

医療業界が抱えている問題を挙げていきます。

デジタル化・DX化が遅れている

医療業界では、患者等のデータの取扱いがかなり遅れていて、病院間の差が開いています。

電子カルテ等はクリニックや200床未満の病院では、普及率が今の時点でも約60%ほどと言われています。

医療情報の管理と共有は、プライバシーやセキュリティの問題もありますが、現代ではデジタル化は避けられません。

医療機関での患者情報の分断

患者の病歴・治療歴・薬歴等は、病院ごとのデータベースに保存されているので、医療機関の間で情報共有ができなくなっています。

患者情報が分断されているため、治療に必要な情報が分からない場合もあります。

国の主導で医療情報の共有化が進みつつありますが、各病院の医療システムの仕様やデータフォーマットの違いでこの問題は浮き彫りになっています。

人手不足の深刻化

医療従事者や福祉従事者は慢性的な人手不足に陥っています。

人手不足問題は、医療従事者らの過重労働を招き、最終的に医療サービスの品質低下や存続の危機につながる恐れがあります。

医療におけるブロックチェーン活用のメリット

ブロックチェーンを活用することで、医療業界にとってのメリットを挙げていきます。

患者情報の共有

患者情報の共有にブロックチェーンを活用すれば、異なる医療機関の間でも安全に患者情報を共有できます。

ブロックチェーンは基本的に情報の改ざんが困難だからです。

ただし、患者情報は極めて特異的な個人情報になるのでパブリック型ブロックチェーンではなく、アクセス権の設定管理やネットワークへの参加者の限定が可能なコンソーシアム型ブロックチェーンの活用が前提となります。

事務的作業の効率の向上

情報の管理に必要だった時間の短縮が促されます。

紙ベースによる情報管理や手作業での集計、データの転記作業などの時間の削減が可能です。

偽造医薬品の流通阻止

医薬品が工場を出て患者の手に渡るまでの全過程をブロックチェーンで記録し追跡することで、偽薬が混入される危険性を減らせます。

日本では流通している医薬品が偽造医薬品ということはほぼありませんが、途上国では1割~2割の偽造品が流通しているとも言われています。

患者は自分の薬がどのような経路をたどって目の前にあるのかを確認できるので、真偽の確認が可能です。

臨床試験の信頼性

臨床試験の過程を可視化し、その信頼性を向上させます。

臨床試験の不正は昔から行われている大きな問題です。

ブロックチェーンの技術を使えば、患者のプライバシーを保護しながら、必要なデータを安全に共有できます。

そして、改ざんが途中で出来ないので、データの信頼性も担保されます。

医療分野におけるブロックチェーンの活用事例

医療分野におけるブロックチェーンの活用事例を挙げておきたいと思います。

偽造医薬品の流通阻止

医薬品の製造から販売に至るまでの全ての情報がブロックチェーン上に記録されています。

どこからどこへと移動したか、誰がいつどの薬に関与したか、などの情報をリアルタイムで追跡できるようになっています。

これにより、偽造医薬品の流通を防ぎ、医薬品に問題があった場合は、迅速に特定して対処が出来ます。

患者情報の管理・共有

医療機関等で行われた検査データや処方データなどをブロックチェーン上に送信し、患者が自分の医療情報を管理します。

ブロックチェーン上の情報へのアクセス権は患者自身が有し、医療関係者は患者からの許可を得ることで情報にアクセスできるので、他の医療機関の許可を取ることなく必要な医療情報の共有が可能になっています。

患者情報のプライバシーと医療情報の効率化を両立していることになります。

臨床研究データの管理

臨床研究モニタリングの実証を行っています。

新薬の開発など、医療業界における研究には巨額の資本が動くので、その研究データには改ざんのリスクが付き物です。

実際に今までもデータの改ざんは大きな問題として取り上げられてきました。

ブロックチェーンの改ざん防止機能を利用して、臨床データの信頼性を確保できるシステムを開発し、データチェックにかかる負担の大幅な軽減が可能になっています。

社員向けの健康状態の管理

企業の社員向けに健康管理アプリケーションを開発している企業もあります。

アプリには自分の健康診断の結果を記録したり、日頃の運動記録を管理することが可能です。

また、他の社員と比較することも容易になり、自分の健康状態を適切に管理し、効果的に健康増進に取り組めます。